溶射について

溶射とは?

「溶射」は、セラミックス・金属・サーメットなどのコーティング材料を加熱し、溶融ないし半溶融の微粒子の状態で、基材表面に高速度で衝突させることにより、被膜を形成する技術です。

材料は基材に衝突することで、扁平につぶれ、急速に凝固・堆積されていくことで被膜を形成していきます。材料を選択することで、「防錆」「防食」「耐摩耗」「耐熱」「耐衝撃」と、さまざまな用途の皮膜を形成することが可能です。

溶射粒子の寸法は基材の寸法に対して極めて小さいため、溶射粒子の温度は基材に衝突した瞬間、基材側に急速に吸収されます。そのため、基材温度の上昇は最小限に抑えることが可能です。

どんな用途で使えるのか?

耐摩耗性

セラミック、サーメット(セラミックと金属の複合素材)などを溶射することで、摩耗に対する耐性を飛躍的に上げる事が可能です。

耐腐食性

高温下で使用される基材の熱酸化腐食や、様々な腐食環境から基材を保護する事が可能です。

グリップ力向上

セラミックス、サーメットなどを溶射することで、耐摩耗性を有するグリップ力の高い被膜を形成することが可能です。

非粘着

セラミック・サーメットなどを溶射し、特殊処理をすることで生ゴムや粘着テープに対する非粘着性を付与します。

低摩擦・潤滑

自己潤滑性の高い材料を溶射することにより、焼き付き防止や、かじり防止被膜を形成することが可能です。

電機絶縁

導電基材表面に絶縁体を溶射することで電気絶縁性を付与することが可能です。

無歪みの肉盛修復

低温にて金属材料を溶射することで、熱歪みのない肉盛修復をすることが可能です。

施工フロー

前処理 前処理

溶射施工対象の表面は油及びグリースなど表面の汚染物質を除去しておかなければなりません。溶射しない面であっても汚染物質が残留していれば溶射対象面に汚れが移行移行することがあります。素地は、清浄にされていなければ溶射皮膜の性能が十分に発揮されなくなり、事実上使用できなくなる可能性が高くなります。

洗浄脱脂
(1)溶剤洗浄

溶剤洗浄は有機溶剤の油に対する溶解力を利用したもので、とくに鉱油が付着している場合に使用します。有機溶剤の使用については必要な防護及び公害防止手段をとらなくてはなりません。

(2)水溶性洗浄

(a)スプレー洗浄
ポンプにより加圧された洗浄液をノズルより噴射し、基材表面に吹き付け汚れを取り除く方法で、比較的軽い汚れの大型構造物に使用するケースが多いです。

(b)浸漬洗浄
洗浄液を溶かした水溶液中に素材を浸漬し洗浄する方法で、素地の寸法は浸漬層の容積に限定されるので、大きなものには向きません。

(c)超音波洗浄
カーボンのような強固に付着している汚れがある素材及び複雑な形状をしているものに適応します。

(3)加熱脱脂

鋳鉄または多孔質の素地に油が内部まで浸透しているものに対しては、250~450℃に加熱して浸透した油を除去します。加熱にあたっては素地が均一に加熱するように注意しなければなりません。なお、大型の素地には、火炎清掃を試みます。

アンダーカット

アンダカットは必要な皮膜厚さの確保、密着性の向上などのために素地の一部を切削することを言います。

粗面化処理(ブラスト) 粗面化処理(ブラスト)

ブラストとは

ブラストとは、コンプレッサーで作った圧縮エアーを使って、鋳鉄グリットや、セラミックス、ガラスビーズなどの投射材(研磨材)をノズルから噴射して、表面の酸化被膜や錆び、塗膜などを削り落とします。また同時に、表面を粗面化することで、次に施工する表面処理の密着強度を高めます。こうした表面処理の前処理を、「素地調整」と呼び、どんな表面処理も、この素地調整が重要な工程となります。ブラストは、素地調整の中でも最も厳しいスペックをクリアする技術です。

ブラストメディアについて

Blast Material

金属系

鋳鉄グリッド、高炭素鋳鋼ショット、カットワイヤー

非金属

天然品:けい砂、オリビンサンド、ガーネット、胡桃粉
人造鉱物:スラグ、溶融アルミナ、炭化ケイ素、ガラスビーズ、プラスチックビーズ

Selection

お客様仕様によって除錆度や粗面化に適したブラスト材料を選びます。研削性や経済性を考慮し、最適なブラスト材を選択しています。

除錆度の評価 鋼材表面のブラスト処理による仕上げ程度を、目視によって表に示す4段階で評価します。評価に際しては、ISO8501-1及びISO8501-1Supplement(追補)の代表写真例と比較します。備考ISO8501-1Supplementは、異種の研削材でSa3に仕上げた写真の例です。

表 除錆度

除錆度鋼材表面の状態
Sa1拡大鏡なしで、表面には、弱く付着(注1)したミルスケール、さび、塗膜、異物、目に見える油、グリース及び泥土がない。
Sa2拡大鏡なしで、表面には、ほとんどのミルスケール、さび、塗膜、異物、目に見える油、グリース及び泥土がない。残存する汚れのすべては、固着(注2)している。
Sa2.5拡大鏡なしで、表面には、目に見えるミルスケール、さび、塗膜、異物、油、グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは、そのこん跡がはん(斑)点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。
Sa3拡大鏡なしで、表面には、目に見えるミルスケール、さび、塗膜、異物、油、グリース及び泥土がなく、均一な金属色を呈している。

(注1) 刃の付いていないパテナイフで、はく離させることができる程度の付着。
(注2) 刃の付いていないパテナイフでは、はく離させることができない程度の付着。

溶射 溶 射

溶射とは

溶射は、燃焼または電気エネルギーを用いて固体物質(金属、セラミックス、プラスチック等)を加熱し、溶融またはそれに近い状態にした粒子を固体物質の表面に吹き付けて皮膜を形成する方法です。1909年にスイスのショープ博士(Dr. M.U.Schoop)により発明された技術であり、その後ドイツとフランスで工業化され、ついで1920年にイギリスで工業化、これと同時に日本にも導入されました。

後処理 後処理

封孔処理

溶射は、金属やセラミックスの溶融粒子の積層によって皮膜となります。その皮膜内には、微細な気孔が存在します。この気孔を埋める処理を封孔処理といいます。

この封孔処理により、防錆防食溶射のライフをさらに伸ばすことができます。軸受けに耐摩耗溶射をした場合は、この気孔に油を含浸することによって、潤滑性の保持の役割を果たすこともあります。 溶射したままの皮膜は、溶射粒子が相互に圧着し合って積層されたもので、多孔質(1~10%)である。皮膜の気孔は溶射の種類、溶射装置の種類や溶射条件などによって異なる。
溶射皮膜の封孔処理は皮膜の開孔に封孔剤を浸透させ、気孔を密閉し、皮膜の化学的性質及び物理的性質を改善する処理法である。封孔処理は封孔剤によって開口部を封孔密閉することにより、皮膜内部は強化、また表面はなめらかになって浮遊のほこりやごみの蓄積が少なくなるので、溶射皮膜の寿命は溶射のまま使用する場合に比べて長寿命となり、また皮膜の外観は長期間良好な状態に保つことができる。
封孔処理は溶射皮膜の中の気孔を埋め、腐食環境にさらされる皮膜の表面積を減少させるとともに、皮膜層の腐食液や腐食性ガスの侵入を防止する。また皮膜と素材との密着愛面での母材防食及び腐食を減少させることや、皮膜中の浸透流体漏れ、加圧シール漏れ防止、あるいはセラミック皮膜の透電率(絶縁性)を保持する役割も果たす。

封孔処理

封孔処理の効果

  • 溶射膜表面積の現象 → 溶射膜溶損量を現象させる。
  • 基材と溶射膜の貫通気孔をふさぐ → 腐食性のガスや液体から基材を守る。
  • 溶射膜の気孔をふさぐ → 溶射膜の強度を向上させる → 絶縁性を向上させる(セラミックスの場合)。

封孔処理のイメージ

封孔処理のイメージ

切削加工

溶射加工には二つの目的で切削加工が必要です。その一つは溶射皮膜と素材表面との間に有効な投錨効果を得ることによって皮膜の密着性を強化させる目的で、前処理として利用されます。もう一つは後処理で法で利用させるもので、溶射皮膜表面が機械部品として用いられることが多くなってきている為、その表面の使用される目的や用途に応じて、荒仕上げから精密仕上げ加工までの各種の機械加工が用いられています。

砥粒加工

砥粒加工は微細な砥粒を用いて行う精密機械加工法です。砥粒は適当な方法で固めて固定砥粒として用いる場合と、ばらばらの砥粒をそのままの状態で用いる遊離砥粒による場合の2種類があります。
固定砥粒の状態で用いる加工法には、研削砥石を用いる研削加工法、棒状砥石を用いるホーニング、超仕上げ加工及び研磨紙を用いる研磨布紙加工などがあります。また遊離砥石による加工法として、ラップ仕上げ、バフ仕上げ、噴射加工及びバレル仕上げなどがあります。溶射組織は多孔質で粒子間結合力はそれほど強くない為、切削加工の際に剥離や粒子の欠落が生じやすく通常の材料に使用している砥石の粒度より少し大きめのものを用いて軽切削を行ったほうが良いとされています。

溶射方法の紹介 溶射方法の紹介

溶射法

1. フレーム溶射法

2. アーク溶射法

3. 高速フレーム溶射法(HVOF, HVAF)

4. プラズマ溶射法